【今月のゲスト】
石川智香子さん(株式会社シーズ・ルネス 代表)
西 ゆり子(以下 西):
今日は「la sakura」代表の石川智香子さんをお招きしました。素材にこだわったシルクの下着を作り続けているブランドです。
石川智香子(以下 石川):
西さんは共通の知人の紹介で百貨店のポップアップが初対面でした。「下着が大好きな方だから絶対お会いしたほうがいい」とお引き合わせいただいて。
西:
10年以上前からのお付き合いですね。「la sakura」を始めるきっかけは?
石川:
もともとは海外ランジェリーブランドのライセンス契約デザインの仕事をしていたんです。それはそれで楽しかったのですが、当時の素敵なランジェリーって、ナイロンやレースで見た目重視。肌に食い込んだり、擦れたりすることも多くて。
「身体に優しい下着」となると、可愛いデザインでまとめられてしまうのが疑問でした。その後、エジプト綿を得意とする会社に勤めたのち独立して、「何か別の素材で勝負したい」と模索していたときに出会ったのがシルクサテンです。今までもシルクの下着は扱ってきましたが、本当に上質なシルクサテンは、肌触りも美しさも別格なんですよ。
さらに、日常使いに適したシルクを探して行き着いたのが「ピュアシルクニット」。まさに“もう一枚の素肌”という感覚で、着ていることを忘れるほど肌になじみ、身体がラクになるのを実感しました。
西:
本当よね、その感じ私もわかる!「la sakura」のシンプルなデザインも素敵。レースが付いていないのが、私たちの業界では画期的でした。
石川:
下着が服に響かず、きれいに格好よく着られることを大事にしたかったので、「la sakura」はシンプルなデザインに振り切りました。
西:
私もシンプルなキャミソールに出会ってから、他の商品もいろいろ試すようになって。
石川:
あのキャミソールは、素材を存分に味わってもらいたくて、ストラップを布にし、ファッションを邪魔しない胸パッドを付けて、素肌の一番近くにシルクを届けたかったんです。カラダが楽になると、他のことに集中するエネルギーを回せるきがして。締め付けず、ブラなしで気軽に外出もできて、何年も使えて、見えてもクール。そんなキャミソールを目指しました。
キャミソール
(写真提供:la sakura/商品詳細)
西:
最近は年齢もいったので、はき込みが深いショーツもいいなと。
石川:
ハイライズ(ロングショーツ)は冷え対策にも良いし、今はトレンドでもあるんです。「身体に食い込まない・蒸れにくい・響きにくい」に加えて、歩きやすい履き込み、お尻をすっぽり包み、前脚ぐりをしっかり見せることで、ハイウエストに目線が上がって脚長効果も出せるようにラインにもこだわっています。ちなみに、産後の方や冷たすぎる車中/オフィスの冷房から冷えに悩む方の支持も高いんです。年齢問わず女性の強い味方です。
ハイライズ/ロングショーツ
(写真提供:la sakura/商品詳細)
西:
今、着る学校は9期目、毎期必ず下着の話をさせていただくの。おしゃれも生き方じゃないですか。下着にも気を遣ってほしいと思ってシルクの話はよくします。理想としてはキャミソール、ペチコート、スリップ、レギンス。この4点をシルクで持っていたら無敵だと思います。
石川:
おっしゃる通りです。女性の身体は本来美しいので、少し整えるだけで十分。締め付ける必要はなく、身体を守る“フィルター”のような役割が下着にはあるべきだと思います。1年通してこの4点はおすすめです。それと、タンクトップも重宝しますよ。胸元が見えにくい浅めの襟ぐりタイプならジャケットインで気軽に外へ出れますしラクです。
タンクトップなどの多彩なラインナップ
(写真提供:la sakura/商品詳細)
西:
でも「高くて買えません」と生徒さんよくおっしゃるけど(笑)。私自身、高いシルクと安いシルクの厳密な違いがわからない。
石川:
実は、シルクは大きく分けると2種類あるんです。蚕から採れる生糸は、2種類のタンパク質でできていて、タンパク質別に機能も違っておもしろいんです。中心にあるのがフィブロインという三角形の繊維で、その周りをセリシンというタンパク質が何層にも覆っているんです。
(資料提供:la sakura)
西:
真ん中がフィブロイン、外側がセリシン。
石川:
フィブロインは光を乱反射して自然な光沢と、吸放湿・速乾・保温冷性などの性質を持っています。一方セリシンは、パールのような艶のもとで、潤い・低刺激・抗酸化作用・抗菌・紫外線カットなどの機能があり、この2つのタンパク質と1,000本以上の長繊維で構成されていることで、初めて「ピュアシルク」と呼ばれるんです。さらに、フィブロインだけのシルクもあって、表示上は同じ“シルク100%”です。比較的割安なシルクにはそれが使われることが多いです。
<生糸 タンパク質別・主な期待する機能>
(資料提供:la sakura)
石川:
かつては「1000m以下の切れ端は絹に非ず」と言われていましたが、日本でその切れ端をつなぐ技術が開発されたんです。ただし、短い繊維をつなぐには、セリシンを取り除いてフィブロインのみに加工する必要があるため、その生地も「シルク」「絹」と表示されるのですが、セリシンを残したものだけが「ピュアシルク」と呼ばれています。日本ではこれを「生糸」「正絹」「本絹」「純絹」などとも呼びますが、一番古い名称は「絹」なので、混乱しないよう注意が必要ですね。
西:
つまり、セリシンが残っているほど上等な下着になるのかしら。
石川:
はい。でもセリシンが100%残っていると硬すぎて衣類には使えないんです。面白いことに、セリシンはある程度落とすことで滑らかな風合いに変わるんですよ。低刺激のもとでシルクがアトピーの方にお勧めできる由縁です。
西:
セリシンの残し加減で、肌触りと機能性のバランスが取れているんですね。セリシンとフィブロインの割合は?
石川:
生糸に含まれるセリシンは全体の約25%、フィブロインが75%です。
西:
そこから、どれくらい減るものなんでしょう。下着の場合は?
石川:
気になりますよね。少し専門的になりますが、精錬方法によってセリシンの残量は変わってきます。シルクは歴史が長い分、加工法も多様で、同じ生糸でも工程の違いで一概に分類できませんので、弊社の場合ですが、生糸がもともと含む25%のセリシンを100%として、そこからどれだけ残っているかを計算しています。「la sakura」のピュアシルクニットはセリシンを18.36%残し、織物では最大で57.48%ものセリシンを保持しています。
西:
なるほど。実際、本当に着心地が別格です。値段には理由があって、どれだけ手間をかけているかが着心地に現れるのね。
石川:
シルクは、繊維業界を支える「生糸(きいと)」の研究から生まれた、さまざまな繊維の原点でもあるんです。その大元であるシルクには2種類あるということを知っていただくと、それぞれの特徴をより楽しんでもらえると思います。着る学校の生徒の方にも、ぜひこの夏、一度はシルクインナーで寝ていただきたいです。 たとえばこんなシーンで ──
夏の夜、冷房の風が気になる季節。ピュアシルクを身につけて、さらっと心地よい肌ざわりを感じながら、クーラーの風を気にせず快眠できる。そんな「冷やさない夜」。
逆に、汗ばむ夜なら、吸汗速乾を叶えるのがシルクインナーです。もしそれがピュアシルクだったなら、翌朝、 肌は瑞々しい潤いとともに、ほんの少し輝きとしっとり感を増しているはず、きっと。
西:
シルクのお洗濯についてもよく聞かれます。
石川:
シルク全般に言えるのは、意外とお手入れが簡単なことです。洗濯機も使用可能で、できればインナーモードやネット洗いで、中性洗剤(市販の衣類用洗剤)を使ってください。もちろん、手洗いが一番やさしい方法ですが、他の素材と比べて特別な扱いが必要というわけではないんですよ。ただ、注意点としては、「乾燥機はNG、陰干しが基本」ということです。風合いを損なう原因になるので、熱湯で洗う・漂白剤を使う・直射日光で干す、といったことは避けてください。
また、ピュアシルクニットの場合は、購入後、最初に軽く水通ししていただくと布目が締まり、毛羽立ちや引っかかりを防ぐことができて、長くきれいに着られます。それよりも、ピュアシルクには抗菌作用があるため、汗などにおいがつきにくく、頻繁に洗う必要がないので、綿と違って毎回洗濯しなくても、陰干しで十分。洗わないの?ってよく驚かれますが、現代人にあるあるの思い込みなので、感覚さえ身につけば、かえって手軽なんですよ。
西:
そう! あれは驚きですよね。私もオーガンジーのワイドパンツを愛用していますが、ハンガーにかけて日陰に1日以上干しておけば、しわも取れて元の形が復元されてる。何かこぼさない限りクリーニングはワンシーズンに一度でいける。
石川:
うちで扱っているオーガンジーは抗菌力が高く、着物と同じ感覚で丁寧に扱えば長く愛用できます。基本的には陰干しだけで十分です。もしシミや汚れがついた場合は、部分的にスチームアイロンの蒸気を軽く当てるか、中性洗剤を含ませた濡れタオルでポンポンとたたくようにシミ抜きしてください。オーガンジーショーツなどは、軽く水にさらすだけでもOKですし、気になる汚れ部分だけ中性洗剤で洗ってください。
西:
この時期は特に寒暖差もあるし、どちらにも対応してくれるシルクは本当に心強いです。
石川:
まさに“第二の肌”のような目に見えない汗や光をコントロールしてくれるフィルターのような存在で、長持ちするので結果的にコストパフォーマンスの良い買い物と思っていただけると思います。親子で一緒に購入される方も多いですよ。
さらに、シルクは天然素材だから、最終的には土に還るサステナブルな繊維でもあります。これからの時代、ますます注目されていくと思います。ぜひ一度、ご自身の肌で「ピュアシルクの心地よさ」を体感してみてください。少しでもみなさんの日々を心地よく彩るヒントになれば嬉しいです。肌に寄り添う一枚で、毎日がもっと軽やかになりますように。
<シルクインナー お洗濯方法/一般>
(資料提供:la sakura)
取材を終えて……
石川:
ちなみに……今日の私の着こなし、どうでしょうか?
西:
ボタンの掛け違いはご愛嬌として(笑)、ポイントは肩じゃなくて腰。こうやって少し調整すると、もっと素敵に見えますよ。
石川:
同じ服でも、着こなし次第でこんなに変わるんですね! まるで魔法が掛かったみたいでワクワクします。今日もたくさん学ばせていただきました、ありがとうございます。やっぱり、綺麗になるって嬉しいですね!私も、もっと着こなしを楽しんでいきたいと思います。読者の皆さんも、ぜひ自分らしいおしゃれを見つけてくださいね。
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la sakuraについて
日本の代表的な美の象徴「サクラ」と、ランジェリーの都・フランスのニュアンスが巡りあって誕生したブランド。着心地からシルエットまでこだわり、女性の身体を美しく見せるパターンと天然素材(シルク)の心地よさにこだわったシルクインナーを販売しています。
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