着る学校の生徒さんは女優以上に変身する(…And Fashion)


西 ゆり子(以下、西):
山下 由さんは、私のアシスタントを経てスタイリストとして活躍すると同時に、着る学校の講師としてレッスンを担当していただいています。スタイリストの道を選んだきっかけは?

山下 由(以下、山下):
高校時代、自分で洋服を決められない友人2人とよく一緒に買い物に行って、好きだけど自分には似合わない服を彼女たちに選んであげていました。それがさらに発展して、彼女たちのクローゼットの服を全部撮影して持っていて、毎日「今日は朝から遊びに行って、夜だけ予備校なの」と予定を言われると、「じゃあ服はこれとこれでどう?」とコーディネートをしていたんです。

西:
毎日?!

山下:

面倒くさいですよね(笑)、でもこれが楽しくて、スタイリストの道へ。大学とダブルスクールで専門学校に通ってみてわかったのは、どうやら雑誌のスタイリストは、まず洋服のコーディネートありきで、それを似合うモデルに着せる仕事らしいぞ、ということ。でも私は友人に着せることが原点で、この人に似合ってこの人の予定に合う服、という発想だったんです。

西:
最初からドラマ向きだったんだね。

山下:
それで探し当てたのが西さんの会社でした。ドラマの世界は未知でしたが、もともと読書も好きだし、特定の人とその予定に合わせて服を選びたい自分にとって、ドラマのスタイリングは好きの極みのようなお仕事だったんです。

西:
そうだったのね!

山下:
ドラマの現場に出るようになった最初の年は、30分、1時間睡眠が当たり前でほとんど記憶がないんですが、朦朧としながらも、「あの女優さんに似合いそう」と思った服が、想像を超えて似合った時は「やっぱりこの仕事は最高だ!」って。

西:
本当にそう。すっぴんでやってきた女優さんが、ヘアメークして服に袖を通した瞬間、変わるからね。

山下:
しかもカメラを通したら、更にですよね。

西:
カメラ前でふっと手を上げただけでも、わーって思う。あの瞬間はスタイリスト冥利に尽きますね。

山下:
着る学校立ち上げの時、日本人の着る力の底上げをしたい、料理学校はあるのに着る学校がない、という西さんの言葉には心から共感しました。

西:
それは本心だったけど、私は長い間芸能人とアーティストとしか仕事していなかったでしょう。失礼ながら、本当に疲れが吹っ飛ぶほど似合う、なんてことが着る学校でも起きるのか?とちょっぴり不安でした。でもね、第1期が終わる時にはみんな素敵に変わってくれて、大感激! 一番やってよかったと思うのは、自撮りをアップして意見交換する生徒さん同士のグループチャット。まるで娘が大勢できたみたいで。

山下:
最終レッスンでの自分の挨拶を思い出します。「日本人は自分から質問もあまりしないしチャットも盛り上がらないだろう、と思った私が間違っていました」と話したくらい、盛り上がったしプラスになった。自撮りも、やったほうが成長できるんだっていうことが生徒さんたちに浸透しました。

西:
シャイでいるだけで、秒単位で損をするのよ!

山下:
あと「他の生徒さんへの先生のアドバイスがすごく参考になります」という声もよく聞きます。

西:
自分一人だと、つい言い訳しちゃうわよね。

山下:
習い事はマンツーマンの方がよい、と思われがちだけど、グループだからこそ、客観的に見られる良さがありますね。ところで今期(7期)のグループチャット、西さんめちゃめちゃ積極的に生徒さんに声掛けしてますよね。トップギアというか。

西:
6期までの積み重ねを経て、ときにはダメ出しや辛口アドバイスもお洒落の成長を早めるには必要かなと。教える側の私でも、意外と安定というか無難にコーデをまとめてしまう時がある。そんな時は、このトップスにはギャザースカートを脱いでパンツでしょ、と自分の中のセオリーがあっても、逆に「西ゆり子、停滞してる?」と自問自答してみたり、自分の中の常識を疑ってみたり…。その後、今まで手に取らなかったアイテムを買ったり、「アナザードレス」のレンタルで気になっていたけど挑戦していないものを選んでみたりしています。山下さんがレッスンの時「トライ&エラーです。がんばりましょう!」って言うのを聞いて、「そうだよね!私もトライしよう」と。

山下:
そうなんですね。

西:
そんな想いがあって、生徒さんには「常に自分の感性に問いかけて!」と、今まで以上に張り切って声を掛けています。

山下:
3か月間進歩のない生徒さんというのは誰一人いませんしね。

西:
センスは磨けるかと聞かれたら、持って生まれたファッションセンスは変わらないかもしれない。お母さんのお腹にいた時何を見て何を聞いたか、感じたことが赤ちゃんの中に残るから。でも、人生、プラスアルファで積み重ねられるものもたくさんあるからね。

山下:
着る学校・基礎コース「オンライン授業」の初回テーマは「好きな服を着ることから始めよう」。実は最初の頃このテーマをお話しするのが一番緊張しました。ぱっと見、精神論みたいで離脱する方がいたらどうしよう、と。でも、それは思い過ごしでした。私たちは「好き」と似て非なる価値観で服を選んでしまう時があって、その実例がテキストでわかりやすく提示されるから、誰もが「好きな服って、表面的なことじゃないんだ」と気づく。好きな服を着る、はやっぱりすごいテーマだなと改めて思います。

西:
精神論だけじゃなくて、日々好きな服を着ることは、実際に自分の未来像につながるから。

山下:
参加される生徒さんの動機は、本当にさまざまですね。お洒落との距離をもう一度縮めたい人。さらにファッションを楽しみたい人。キャリアアップのために服のパワーを借りたい人……。どんな人も、自分が本当に好きなものや、なりたい自分を再発見できる場所だと思います。しかもアットホームな雰囲気です。

西:
着る学校は、期をかさねて卒業生の人数も増えてきたので、いずれ一緒に何かできたらいいな。せっかく「着るを楽しむ」を、みんな実行してるわけだから、ファッションショーで入学したての写真を見せつつ現在の姿で登場するとか。あまりにも印象が違うからインパクトがあると思う。それでいて着ている服がそこまでガラッと違うわけじゃない。そこがこの学校のすごいところですね。別にモデルのような服を着るわけではないからこそ、見る人たちの勇気になるかな、と。しかも芸能人の方は衣裳を脱いだらリセットされるけれど、着る学校の生徒さんたちは、これからもそのまま服を着続けて、人生さえも変えていく。その姿を生徒さんに見せてもらえるのは、講師としてとても嬉しいことですね。

山下:
はい!刺激的で、そして勉強になります。

西:
一人でも多くの人に「着るを楽しむ」をお伝えできるように、一緒にがんばっていこうね。頼りにしてます。

着る学校(校長・西ゆり子)

着る学校は、「スタイリング=着る力」を学ぶコミュニティ(登録無料)。『着るを楽しむ!着る力が身につく!』をコンセプトに、様々なレッスンを通じて、おしゃれの知識や情報を知ることができます。現在、6,000人以上の女性が登録。洋服を楽しむのに年齢は関係ありません。人生100年時代、私たちと一緒におしゃれをもっと!もっと!!楽しみましょう。

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