流行は空気感みたいなもの。追いかけるより感じて(Press And Fashion)


西 ゆり子(以下、西):
今日は、ファッションプレスとして活躍されている別府恵美さんをゲストに迎えました。長い間、一流のインポートブランドに携わり、確かなセンスをお持ちの方です。ファッションプレスというのはブランドの広報担当ということでいいでしょうか?

別府 恵美(以下、別府):
そうですね。雑誌やテレビでモデルさんや役者さんが着る服をスタイリストさんに貸し出したり、イベントやコレクションに立ち会ったり、ブランド全体の広報を担う仕事です。私は、これまで幾つかのラグジュアリーブランドのプレスを経て、今はsan frères社が扱う「DOROTHEE SCHUMACHER」「PINKO」「SEVENTY VENEZIA」「19.70」「PUROTATTO」「P.A.R.O.S.H.」などのブランドを担当しています。

西さんと初めて本格的に仕事をご一緒したのは、映画『冷静と情熱のあいだ』の時でしたね。


西:
もう25年近く前になりますでしょうか。

別府:
当時はファッション誌全盛の時代でもあり、服のお貸出しは雑誌スタイリストの方がほとんど。

西:
そこにひとり、インポートのお洋服を映画で使わせてほしいと私が乗り込んだのよね。


別府:
きちんと企画書を持ってきてくださって、「主役のケリー・チャンさんが着る印象的なコートを」ということで、ピスタチオ・グリーンのスエードのロングコートをお貸出ししました。西さんは少しお姉さん世代だけれど、不思議とウマが合い、以来公私ともにお世話になっています。

西:
プレス担当者は仕事中つねに私服だけど、別府さんは、さりげないけどセンスが光っていて、いつも頭の先からつま先まで品が良くて素敵。

別府:
西さんに褒められると嬉しいです。少し業界的な話ですが、撮影用のサンプル服は高身長のモデルサイズでしょう。女優さんの多くはモデルより小柄で華奢ですよね。西さんは、体形を知り尽くしたうえで「この服ならこうすれば着こなせる」という見きわめを迫られる。

西:
ハイブランドの世界って白黒がはっきりしていて、このレーベルはこの女優さんにはリース不可、とか判断が明快で、かえって悩まない。ブランドによっては、「必ずこの組み合わせで」と言われて「室内の場面なので、コートは……」「えっ、それは困るんですけど」みたいなやり取りがあったりする。コレクションではコートとインナーがワンセットというケースもあるから、そこはロケ現場の事情をわかってもらえるようにスタイリストが交渉しないと。

別府:
大変な交渉をしてまでインポートを使いたいと思ったのはなぜ?

西:
そりゃ、きれいだもの。着た時に全然違う。身体にそって無理がない。お値段は嘘つかないし、本当の「着心地」は、海外のハイブランドで経験できるものだと私は思ってる。その点、今の人たちは着心地の悪い服に慣れちゃっているんじゃないかしら。


オールマイティなワンピースに、今年らしくカラフルなスニーカーを。スタイリングは西ゆり子(以下、同)。[グレー半袖ワンピース]ブランド:P.A.R.O.S.H (パロッシュ)


別府:
会社に来る途中、若い人のファッションが気になるからじっと見ているけど、いい悪いじゃなくて、最近の人はファッション自体に興味がないんだな、と。通勤時間帯だから働く人が多いと思うけど、年齢にかかわらず、Tシャツにウエストゴムのどろんとしたロングスカート穿いて、足元はスニーカー、という人がぞろぞろ歩いてる。いくら猛暑とはいえ……(笑

西:
でもその中にも必ず何パーセントか本当は服が好きな人がいて……でもうちの生徒で言うと、体形が変わり流行も変わってしまい、何を着ていいのか迷子になっている人は多い。

別府:
シーズンごとのファッションのビッグテーマも、昔と違い本当に今はなくなっているから、正解がわかりにくいですしね。もちろんモードの世界では相変わらず「秋冬10のキーワード」みたいな記事がありますが、今年はコレ!というよりは、人それぞれという「多様性」が求められています。だから、流行って空気感みたいなものをその時々で捉えて、少しだけ自分のために取り入れれば充分じゃないかしら。

フェミニンなブラウスと、流行を感じさせるハードの雰囲気のデニム。[ブラウス&デニム]ブランド:DOROTHEE SCHUMACHER(ドロシー シューマッハ)


西:
そうね。流行って吹く風みたいなものだし、そもそもヘンなものなのよね。実際に着ると違和感だらけだったりする。恥ずかしくて着れない! ってなりそうなところを見慣れるまで試して、これはいけるなと思ったものを取り入れれば。

別府:
今の潮流をしいて言うなら「クワイエットラグジュアリー」ですかね。つかみどころのない言葉だけど、要約すれば派手なロゴとか一切使わずに色も抑えめ。ブラウン、グレー、ホワイト。さりげなくて、でも着てみるとすごく着心地が良くて、というもの。

西:
私、好きですよ。何でもない服を上手に上品に着てる人はいいと思う。ラグジュアリー感も「見て見て!」じゃなくシーンとしてる。だけどエレガントできれい。

別府:
デザインシルエットも、そこまで主張が強くはなくて……。アウターは今年はコートよりもケープが目立ちますね。首に巻くようなディテールがついていたり、ポンチョや着るストール系も含めて数が多いですね。弊社で言えば「PUROTATTO」なんかはど真ん中のブランドで、評判いいですね。

柔らかいカシミアニットにコーデュロイパンツ。秋の始まりに着たい色。[ニット]ブランド:PUROTATTO (プーロタット) [パンツ]ブランド:SEVENTY VENEZIA (セブンティ ヴェネツィア)

西:
ラグジュアリー感で言えば、この夏「白」が流行ったけど、秋冬も白や淡色は気になります。ニット素材でも茶色を着るより、ラグジュアリー感が出る。

別府:
「白×白」「白×ベージュ」とかね。着る学校の生徒さんのような大人世代にとって、色は流行の中でも比較的取り入れやすい要素だと思います。相反するようだけど、赤もこの秋は色々なブランドがさし色的に出しています。

赤いシフォンのロングブラウス。[赤ブラウス&黒パンツ]ブランド:P.A.R.O.S.H (パロッシュ)

西:
シアーも引き続き流行りそう。昔は透け感があるものは夜限定でしたが、今は昼間に着ても自然なリッチ感、ラグジュアリー感を出せるデザインが増えました。

別府:
半面、ピーコートみたいな超定番も出てきています。

西:
本当に多様ですね。生徒さんがおしゃれになるためには、どんなことをすればいいと思いますか?

別府:
とにかくたくさんの洋服を見て欲しいと思います。スタイリストや私たちプレスは、常にたくさんの洋服に触れています。ファッションはセンスという側面もありますが、一方で体験や知識の量も大切で、やはりたくさんのことを知っている方が有利です。ですので、みなさんにもたくさんの洋服を見て、感じて、楽しんで欲しいですね。

西:
着る学校の生徒には、わかりやすさのために百貨店でまとめてチェックすることをおすすめしています。若い人たちの集まる専門店やセレクトでは高いものも安いものも同等の見せ方、バナナリパブリックでもハイブランド品みたいな並べ方をしていて、ステキだけど百貨店的なわかりやすい枠がはずれていて、40代以上には見きわめが難しい。デパートの4階から2階まで見て、どれくらい違うのかという自分で理解すれば、セーター2枚買うところを1枚にして、上の階のものを買おう、そんな考えになっていくのじゃないかな。


<< Profile >>

別府 恵美 / Emi BEPPU

ファッションを中心としたPR、イベントなどを手がける「SPLASH」代表。


<< ヘッダーの2ショット写真 >>

【別府さん】
フランスの老舗ブランドWEILL(ヴェイユ)のジャケットに白T、ワイドデニムパンツできちんと感と抜け感を両立。


【西ゆり子校長】
TAE ASHIDAのブラウスにシルクのパンツで快適・シックに。



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着る学校(校長・西ゆり子)

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