西 ゆり子(以下、西):
朝晩、羽織りものが活躍する季節になってきました。
河毛俊作(以下、河毛):
羽織りものといえば、「そもそも、お前首に巻きつけたそのセーター着るのかい、着ないのかい問題」というのがあるでしょう。
西:
ええ(笑)。巻きつけるのもカーディガン派とクルーネック派がいますよね。
河毛:
自分自身、やらないこともないんですが、あの巻き付けたセーターは、そもそも着る気がない。スカーフの一種と割り切っている。
西:
なるほど。
河毛:
肩にかけるだけでも、冷房の肌寒さをしのげる。最近は下に着るTシャツのサイズがゆったりめになったせいか、羽織るアイテムも連動してゆったりしたものが中心ですね。羽織りものがタイトだとバランスがとれない。例外的に、トム・ブラウンのカーディガンなんかはすごくタイトなラインで、あれは羽織りものとは呼べない。
西:
羽織るという着方じゃないのね。
河毛:
トム・ブラウンのアイコン的なグレーのカーディガンを持ってますが、何かのタイミングで脱ぐことはあるにせよ、基本は脱いだり着たりせずにその格好で一日を過ごすのにふさわしい服ですね。
西:
あのタイトなラインに合った体形をキープしてる人にしかふさわしくないのね(笑)。
河毛:
まあ、そこまで考えずにみんな買ってると思うけど、確かにパツパツにはなりますよ。でも、もともとニットはアスレティック・ウエアだったから、トム・ブラウンのサイズ感のほうが実は正しいのかも。僕らが中学生の時、試合用の正式なラグビージャージはウールのニット素材でした。一種のセーターです。
西:
へえ~。ハイゲージで編んであるの?
河毛:
いわゆるジャージ編みっていうのかな。水洗いすると縮んだり、毛玉が出てきたりするのも、それはそれで悪くないんです。
西:
縮んでちょうどいいフィット感になっていたかも。
河毛:
いまどきの新素材ピタピタのラガーシャツとはまた違う、ちょっといいものでした。今日は西さんもカーディガンだけど、ボタンの掛け方が……。
西:
フフ、全部かけ間違えました、というのは冗談で、要するにカーディガン自体はレギュラー丈なんです。でも今のトレンドではレギュラー丈で着ると間が抜けるのよ。河毛さんもおっしゃったとおり、今はトップスが全部大きく、短くなっているから、このカーディガンをそのまま着ると、ただのおばさんなの。
河毛:
うん。
西:
それがボタンを互い違いにかけると、どちらかが短くなる。アシンメトリーで、「あいつ、なんかわかんないものを着てるな」と思われる、それが狙い。
河毛:
さすがです。
西:
洋服の着方って、自分さえ納得すればいいような気がします。
河毛:
今年の夏は、本当に暑い日が続いたから、「シャツ寄りのジャケット」みたいなものをずいぶん見かけました。今日着たのもそうですが、原型はファティーグジャケットだけど、ギャバジン系のゴワゴワよりも薄手の生地で着心地も軽い。極端なことを言えば、ワイシャツ生地でサファリジャケットを作るような感じ。またはCPOシャツの進化系。その手の形だとポケットを付けられる利点があるから、スマホや眼鏡なんかもすべて収まる。夏はTシャツ一枚でポケットが減るけど、できたらバッグを持ちたくないので。お洒落じゃないから、ガンガンポケットに物を入れてしまう。
西:
でも変なバッグ持つよりポケット派、好きだわ。
河毛:
最近はボディバッグ派も増えたけど、あれはあれで、犬の鑑札みたいなのつけてどうするんだ、って突っ込みたくなる時がある。
西:
その言い方(笑)! でもわかります! 考えたら男の人は大変よね。女性みたいにノースリーブ一枚なんていう格好はできないし。
河毛:
筋肉誇示なのかとか、逆に、昔釣り堀にいたお爺ちゃんみたいに思われそうだし。
西:
これから初秋に向かって、河毛さんが勧める羽織りものは?
河毛:
誰もが絶対持っておいたほうがいいと思われるのは、やっぱりGジャンだよね。
西:
それは間違いないですね。でも自分に合うGジャンに巡り合うのはけっこう大変。
河毛:
でも女性も今ならフェミニンなワンピースの上から着られるし。最近ゴワつかない薄手のものも増えているし。もっといえばブルージーンズ素材じゃないものもある。自分自身は基本から離れるのがあまり好きじゃないけど、女性なら着心地優先もありですよ。
西:
いや、オラも基本からはずれるのは嫌い(笑)。あのゴワゴワを柔らかくするのが人の歴史だろ! なんて思ってしまうから。Gジャンは、これだ!という一着を見つけたら、一生それを着ててほしいの。
河毛:
そういうところはあるよね。現実には同じ一着をずっとは着てませんけど。
西:
でもずっと持ってるでしょ。
河毛:
そう、捨てはしない。
西:
Gジャンとかライダースって、「私のためにある」と思ったら、ずっと所有しておくものよ。
河毛:
ライダースの重たいのはさすがにキツくなってきたな……。袖のジッパーが痛いし(笑)。
西:
そうですね。体型も変わってくるし。でも、自分の逸品は着なくても取っておきたい。河毛さんの現役Gジャンは何着くらい?
河毛:
買った時期はばらばらですが、4着かな。今は選択肢も色々で、リーバイスに代表されるジーパン屋のもの、岡山などのジャパニーズ・デニム、アメカジ系のショップのオリジナル、モードブランド……。私は基本ジーパン屋ですけど、一着、異色なクロムハーツが混じってる。
西:
へえ! どんなのですか?
河毛:
ボタンがシルバーで、衿が黒い革で、背中にストーンズのリップ&タンがついてる。
西:
そりゃあ二度と手に入らないわ。
河毛:
迫力が出すぎてなかなか着れない……特殊な人みたいな感じで。
西:
どんなときに着ていらしたの。
河毛:
いや、普通に着てたんですが、今となっては文化財の一種ですね。
西:
私はトム・フォード時代のグッチのGジャンです。ウエストラインのシェイプとかとてもキレイで。オーソドックスだけどシャープで、私の好きな時代のグッチです。私自身はそこまでジーンズが得意じゃないし、買った時よりやせたので、今は寝かせてる。
河毛:
いまやジーンズは得意不得意を超越して、ラーメンみたいな存在だから。
西:
ラーメンね!!なるほど(笑)
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