#M022 男のジュエリーは「飾り」じゃない河毛俊作(以下、河毛):最近、各ブランドが男たちにもジュエリーを売ろうとして、たわけた謳い文句もときどき見かけます。でも、男が本気でジュエリーをつけた時代となると、ルイ14世くらいまで遡る必要がある。西 ゆり子(以下、西):絢爛豪華なロココの王族スタイルね!河毛:自分が生まれてこのかた、当たり前だけどそんな時代はなかったわけで、記憶の中のメンズジュエリーと言えば、カフスボタンかな。西:懐かしい! 昭和を感じますね。河毛:昔はタイピンとセットで、よく女性が男性に贈ったり、お礼の品としたり。デザインは微妙なのも多くて、子供ごころに「妙なカフスボタンだな。なんでこんな変なの……」と思っていた(笑)。西:以前に比べてお店でカフスのコーナーっ...2024.05.28 23:00男の服と、いい時間(2023)
#M021 シャツを着る、シャツを買う楽しみ河毛俊作(以下 河毛):シャツってなんとなくいいものですね。シャツを買うと幸せな気分になる。Tシャツにはない何かがある。西 ゆり子(以下 西):そうですね。襟付きのシャツを着るとシャキッとする。河毛:山田太一さんの「シャツの店」というドラマがありますが、「シャツ」という言葉は、何か特別な意味を持つのかも。西:河毛さんのシャツコレクションはすごそう。河毛:店が開けるほどあります。直近40年分のもの大半を今も持っていますから。西:それはすごい!河毛:一番古いのは、1980年代のブルックスブラザーズのボタンダウンシャツで、ボタンの数やタグが今のものとは微妙に違います。あとエルメスの古いドレスシャツとか。普通に考えるとシャツって捨てやすいも...2024.04.23 23:00男の服と、いい時間(2023)
#M020 スニーカー時代の「男の靴」と「品格」河毛俊作(以下 河毛):既成事実として、今はスニーカーが世界で一番偉いものになりました。街でも、ランウェイでも。西 ゆり子(以下 西):まさに大手を振ってますよね。河毛:会社でも「自宅にスニーカー部屋がある」というスタッフがいるくらいだから。西:うちの息子もそう。壁一面スニーカーですよ。私は骨折がきっかけでスニーカーの良さに味をしめちゃって、怪我が治った今もほぼほぼスニーカーになりました。スニーカーは世界的なファッショントレンドであるわけだけど、日本人にとっては3.11の大震災がひとつのターニングポイントだった気がする。みんな黙々と暗がりの中を何時間もかけて家に向かって歩いていましたね。あの日を境に日本人のスニーカー率は格段に増えた...2024.03.26 23:00男の服と、いい時間(2023)
#M019 大人のニットにほしいのは「頓着しない色気」西 ゆり子(以下、西):このニットは、エルマンノ・シェルヴィーノで、なんと素材がレースなんです。派手でしょ? 河毛俊作(以下、河毛):いいじゃないですか、ロックな雰囲気で。西:70代はシンプルにと思って、本気で断捨離を始めたんです。家を処分して賃貸に、洋服も1m幅のクローゼットに収めたくて1枚2000円で売ったら、飛ぶように売れんですが、なぜかこの一枚だけ戻った(笑)。これも縁かと思って一生付き合おうかな、と。河毛さんは、とても着やすそうなクルーネック。河毛:いつでもどこでも着られるタイプ。バトナーのものです。西:素材はカシミアでしょう? やっぱりこれに勝るものはないかも。河毛:ニットらしいニットですね。服の中でもニットは好きですね...2024.02.27 23:00男の服と、いい時間(2023)
#M018 決めすぎより「一抹の野暮ったさ」が いまどきジャケット成功のこつ西 ゆり子(以下、西):自分の中で「今日はジャケットの気分」という日があるんです。あれは何なんでしょう。河毛俊作(以下、河毛):それはありますね。ジャケットの気分かどうか。男の場合、もうひとつ分かれ道があって、タイを締めるか締めないか。西:襟を正す気持ちよさみたいなことかしら。河毛:ただ、ジャケットを着てタイを締めた時の気分の高揚は、昔ほど感じなくなった。それは歳を取ったからかもしれない。体力的にキツくなったということかも。西:この年齢になると快適が一番ですから。今日、私はたまたまタイを締めてきましたが、ボタンダウンシャツに合わせてもう少し手直ししようか考えたけど、タイが一度でうまく決まらないのは、気持ちが萎える。こらえ性がなくなり...2024.01.30 23:00男の服と、いい時間(2023)
#M017 時間が経った「良いもの」だけが出せるニュアンスを愛したい西 ゆり子(以下、西):私たち、ファッションの基礎を「学ぶ」ということはなかったですよね。河毛俊作(以下、河毛):今と違ってファッションの体系的な情報もなかったしね。西:そうね。そのなかで、なぜこれはいい、あれはダメ、と判断したのかしら。河毛:子ども時代を思い起こすと、うちの父は外では背広に帽子だけど、家でくつろぐ時は着物で、日常に洋服を着るオーソドックスはまだなかった。西:私の母も眠る時は着物でしたね。河毛:それなのに、近所の洋裁店では「パリ・モード」を謳っていたりして、よく考えるとおかしな話でした。洋服を日常に着るルールがないところに、いきなりやれAラインとかトラぺーズラインとかのパリモードが入ってくる。西:すごい「にわか」よね...2023.12.26 23:00男の服と、いい時間(2023)
#M016 さまになるフォーマルは自分がいつも通りのテンションでいられる服を河毛俊作(以下、河毛):男の場合、フォーマルのなかの分岐点は、「タキシードを着るか、着ないか」じゃないでしょうか。でも、着る機会そのものがずいぶん減った。コロナの2年あまりを経て、世の中の人が、べつにわざわざ着飾って集まらなくてもいいじゃないか、と気付いてしまった。僕は誰かの披露宴に行くのも、基本ダークスーツなんですが、見回すと突っ込みを入れたくなる服の着方が時々ある。たとえば昼間のタキシードはやめようよ、と思う。西 ゆり子(以下、西):それは駄目ですよね。タキシードは夜の服。ルールは押さえたいです。河毛:せっかくならモーニングをちゃんと着なさいよ、と言いたい。基本的には男のフォーマルは黒よりもむしろミッドナイトブルーのスーツがいい...2023.11.28 23:00男の服と、いい時間(2023)
#M015 今、カッコいいコートは日本ブランドで探せ!西 ゆり子(以下、西):今日はいきなり失敗談から始めていいですか(笑)? 展示会で注文した新作のコートが届いたんですが、シッカリ出来すぎていて、なんとボタンをはずすのに悪戦苦闘。たまたま届く直前に熱を出したので、体力が落ちてるせいにしたかったけど、いやいやボタンの固さがカベになって絶対クローゼットの肥やしだわ……と思って「軽いコートと交換していただけますか?」とお聞きしたら、受注発注だったらしく、涙を呑んで返品しました。デザインは最高だったんですけどね。堅くて重いコートを、来年、再来年の私が着るのか? といったらやっぱり敬遠してしまう。というわけで今年のコートは振り出しに戻っちゃった。河毛さん、もう何か見つけました?河毛俊作(以下、...2023.10.24 23:00男の服と、いい時間(2023)
#M014 Gジャンは羽織りもの界のラーメンだ!西 ゆり子(以下、西):朝晩、羽織りものが活躍する季節になってきました。河毛俊作(以下、河毛):羽織りものといえば、「そもそも、お前首に巻きつけたそのセーター着るのかい、着ないのかい問題」というのがあるでしょう。西:ええ(笑)。巻きつけるのもカーディガン派とクルーネック派がいますよね。河毛:自分自身、やらないこともないんですが、あの巻き付けたセーターは、そもそも着る気がない。スカーフの一種と割り切っている。西:なるほど。河毛:肩にかけるだけでも、冷房の肌寒さをしのげる。最近は下に着るTシャツのサイズがゆったりめになったせいか、羽織るアイテムも連動してゆったりしたものが中心ですね。羽織りものがタイトだとバランスがとれない。例外的に、ト...2023.09.26 23:00男の服と、いい時間(2023)
#M013 猛暑の「ほんとうに涼しい素材談義」西 ゆり子(以下、西):今年は猛暑のレベルがまた一段上がりましたね。素材選びがますます大事になっているかも。河毛俊作(以下、河毛):夏は誰でも、さらさらとかシャリシャリの素材感が好ましいから、「綿と麻につきますね」で話が終わってしまいそうですけど、素材も多様化が進みましたよね。夏だからといって一概に麻一択とは言えない。それに麻は意外に暑いこともある。西:メンズの場合、そうかもしれません。きちんと仕立ててあるだけに。河毛:化学繊維をブレンドしたものも増えましたが、麻100%は、とにかくしわになる。時間が経つと小田原提灯みたいになるでしょう。西:まさに(笑)。20代の男の子なら、多少小田原提灯でもいいのよ。でも女性はちょっときついかな。...2023.08.29 23:00男の服と、いい時間(2023)
#M012 小物こそ自分が信じる「格好いい」を貫け!西 ゆり子(以下、西):今日は河毛さんの「小物」について根掘り葉掘り伺いますね。私は河毛さんの足元に毎回キュンとするんですが、今日もいい!(※編集部注:カバー写真とは別日のコーデ)河毛俊作(以下、河毛):「ドーバーストリートマーケット」で買ったアディダスのです。西:しかもこの履き方。ハイカットをあえて穴2つほど開放してるんですね。このタブの引っ張り出し加減もカワイイ。河毛:単純にこのほうが脱ぎ履きが簡単なんですよ。西:またまた(笑)。こうするとパンツの裾が靴のハト目にぶつからないから傷まないし、靴紐もほどけにくい。技ありだわ!2023.07.25 23:00男の服と、いい時間(2023)
#M011 Tシャツは思い出を背負っている西 ゆり子(以下、西):今日はフォトTですね。おしゃれ!河毛俊作(以下、河毛):昔から写真家のブルース・ウェーバーのフォトTシャツが好きなんです。今は色々なブランドが手がけるようになりましたけど、さきがけはアニエスベーだったと思います。80年代の終わりか90年代の初めころ、野口 強さんが現場に着てきたのを見て「それいいね」と買ってきてもらった。チェット・ベイカーの写真がプリントされていて、いまでも持ってます。ネットで見ていたらとんでもない値段がついていて驚いた。Tシャツを大別すると、このフォトTみたいにイベントやチャリティにちなんでいるカルチャーT、ミュージシャンのロックT。あとはUCLAなんかに代表されるカレッジもの。校名入りとか...2023.06.27 23:00男の服と、いい時間(2023)