#S020 おしゃれのTPOは相手に対するリスペクト


 こんにちは、西ゆり子です。今月は「シーン別のおしゃれを楽しむことが大切」というお話をしています。どんな場所に行くときでも同じスタイルではなく、日々の生活の中における様々なシーンによって、身に着ける服も変えてみる――それがおしゃれの幅を広げることにつながって、ひいては人生そのものを豊かにしてくれると、私は思っているからです。

 ですが、その際にひとつ注意が必要です。「シーン別のおしゃれをしましょう」とお話すると、「TPOに合わせなきゃいけないんですよね。それって、難しくないですか?」と、質問されることがよくあります。それは多分、「TPOに合わせた服装は堅苦しい」「その場にふさわしいドレスコードなんて、よくわからない」と思っている方が多いからでしょう。でも、TPOに合わせたおしゃれとは決して堅苦しいものでもなければ、難しいものでもありません。そうではなく、TPOに合わせた服装は相手のためのリスペクト――まずはそう考えてみてください。

 これは私の持論ですが、そもそも、おしゃれな装いには欠かせない条件が3つあると思っています。その3つとは「コンサバティブ」「華やかさ」「エッジ」。その中で「コンサバティブ」はすべてのおしゃれの基本となるルールです。どんなおしゃれをする場合でも、この基本をきちんと知った上で「自分らしさ」を表現することが欠かせません。そして、「華やかさ」は相手のためのもの。たとえば、「今日は久しぶりに〇〇さんに会うから、赤いワンピースを着て行ったら喜んでもらえるかな」というように、相手に思いを寄せて服を選ぶ。つまり、相手の方へのリスペクト――それが「華やかさ」であり、イコールTPOに合わせた装いなんですね。コンサートホールに出かけるときに、私がいつもよりシックな装いを心がけるのも、「クラシックのコンサートに行くから、きちんとした格好をしていかねばならない」というルールに縛られているわけではなく、この日のために練習を重ねてきた音楽家の方に対するひとつのリスペクトなんですね。友人たちと三ツ星レストランに食事に行くときに、そのお店の雰囲気に合ったグレードの服を着て行くのも、そのお店の風景を創り上げているスタッフたちと同席する友人たちへのリスペクト。だって、もし自分がハーフパンツにスニーカーというスタイルでその場に出かけたら、三ツ星レストランという風景を台無しにしてしまうし、同席した友人たちも隅っこの席に押しやられる羽目になってしまうでしょう。そんな残念な事態を避けるためにも、TPОに合わせた「華やかさ」が必要なのだと思います。ちなみに、「エッジ」は自分の個性を際立たせるための手段ですから、あくまで自分本位のおしゃれで大丈夫。

 つまり、それぞれのシーンにおける最低限のルールさえふまえておけば、相手への思いを第一に、その場にあった自分らしいおしゃれを心がければいいのです。私の場合、知人や仕事関係の方のお葬式にも、いわゆる喪服は着て行きません。最近、愛用しているのは黒地にスカートの部分がモスグリーンのワンピース。まったく似合わない貸衣装のような喪服を着るよりも、こちらのほうが亡くなった方への悲しみを私なりに表現できると思うから。「似合う喪服が見つからない」という声もよく聞きますが、喪服コーナーで探さずに、自分に似合う黒い服を好きなブランドの中から探せばいいのです。また、結婚披露宴に出席するときは、「おめでとう」と祝福の気持ちを込めて、鮮やかなグリーンや黒地にピンクのドットなど、明るい色が入ったワンピースを着て行きます。ある程度の年齢になると、結婚式にグレーやネイビーのスーツで出席する方も多いでようですが、相手を祝う心を大切にするならば、もう少し明るい色の服を選んでもいいかもしれません。

 ひとくちにパーティと言っても、昼間に着るアフタヌーンドレス、夕方に着るカクテルドレス、夜に着るイブニングドレスでは、それぞれドレスコードが違います。「面倒くさい」と感じるかもしれませんが、ゲームだってルールを知らなければ遊べません。自分の生活の中でドレスコードが必要な場があるのなら、知識として知っておくことは大切です。そして、そのルールに縛られるのではなく、むしろ前向きに臨んでいったほうが、おしゃれをするのがもっと楽しくなるはずです。

 服で自分の個性を演出するのがおしゃれを深めていくことだとしたら、シーン別の装いを楽しむことはおしゃれの幅を広げること。服が持っているこの2つの力を自由に扱えるようになれば、もはやおしゃれの達人です。

着る学校(校長・西ゆり子)

着る学校は、「スタイリング=着る力」を学ぶコミュニティ(登録無料)。『着るを楽しむ!着る力が身につく!』をコンセプトに、様々なレッスンを通じて、おしゃれの知識や情報を知ることができます。現在、6,000人以上の女性が登録。洋服を楽しむのに年齢は関係ありません。人生100年時代、私たちと一緒におしゃれをもっと!もっと!!楽しみましょう。

0コメント

  • 1000 / 1000