西 ゆり子(以下、西):
今日は河毛さんの「小物」について根掘り葉掘り伺いますね。私は河毛さんの足元に毎回キュンとするんですが、今日もいい!(※編集部注:カバー写真とは別日のコーデ)
河毛俊作(以下、河毛):
「ドーバーストリートマーケット」で買ったアディダスのです。
西:
しかもこの履き方。ハイカットをあえて穴2つほど開放してるんですね。このタブの引っ張り出し加減もカワイイ。
河毛:
単純にこのほうが脱ぎ履きが簡単なんですよ。
西:
またまた(笑)。こうするとパンツの裾が靴のハト目にぶつからないから傷まないし、靴紐もほどけにくい。技ありだわ!
河毛:
今日はスニーカーだから普通丈のソックスですが、男の場合足元が担う役割は大きくて、夏に革靴を素足で履くか、靴下を履くか、たぶん女性以上にシビアに考えているかもしれません。今は自分自身、短丈ソックスや一見裸足に見えるフットカバーを使うようになりましたけど、ある時期けっこう素足派でした。でも、うっかり人の家に行くと困るんだよね(笑)。スーツ着て裸足ですからね。
西:
石田純一さんを思い出すわ。
西:
でもじつは石田さんに限らず、一定数そのスタイルの人はいるんです。たとえばトム・ブラウン。じっさい見えないように履いているかどうかは別として、一見裸足風でウィングチップを履く、みたいなのが彼のひとつのアイコニックなスタイルになっている。
西:
次に目が行くのはその眼鏡。デザインが素敵。
河毛:
これはフランスのレスカ(Lesca)ですが、レスカはオリジナルの現行商品もありつつ、買い付けのヴィンテージグラスや、ヴィンテージのアセテート生地を自社でアップサイクルしていたりして面白い。これもヴィンテージフレームです。
西:
どこで買えるんですか。
河毛:
渋谷の「グローブスペックス」で扱っています。
西:
確かにメンズはイヤリングを着けられるわけでもお化粧できるわけでもないから、夏仕様を表現するなら眼鏡やサングラスですね。私も運転することもあってサングラス大好きですが、日本人全体のサングラス常用率はたったの10%ですって。日本人は瞳が黒くて丈夫で、西洋人ほど必要ないのも事実だけど。
河毛:
西洋の人にとっては医療器具ですね。
西:
必需品でしょうね。日本でも若い方たちはかけなくてもいいくらいだけど、私たちくらいになると、昼間サングラスなしでがんばってしまうと、夜になって目が疲れますね。それに、サングラスひとつ足しただけでファッションが成立することもあるから、やっぱり欠かせない。
河毛:
煙草とサングラスとTシャツは永遠に滅びないクールなものだよ。
西:
煙草はあんな電子タバコになっちゃったけど。
河毛:
電子タバコは、いっとき試したけどカッコ悪いからやめました。
西:
そうね。河毛さんがあれを喫っている姿は想像できないわ。
河毛:
煙草はともかく、サングラスって人に表情を見せないところも格好いいと思う。
西:
帽子は?
河毛:
帽子は似合わないからな……とくにキャップが似合わないんだよね。
西:
河毛さんの職業でキャップが似合わないはけっこう大変なことよ。炎天下でロケすることだってあるし。
河毛:
まあ、四の五の言ってられないから撮影現場では使いますけどね。ニットキャップもイマイチ。でも客観的に素敵な人がかぶっていると帽子ってほんとにカッコいいですね。
西:
かぶるだけでよそいきになる。
河毛:
うちの親父も中年になる頃までは、帽子を毎日愛用していました。
西:
被らなくなったきっかけは満員電車かもしれませんね。それと同じで、この酷暑で夏のいでたちも様変わりしましたね。
河毛:
自分としてはどんなに暑くても、日傘とミニ扇風機は、絶対ない。反対に、ハンカチはますます大事ですね。ふだんはバンダナをよく使います。くしゃくしゃに使い込むと、端がほつれてきてしまうけど、そうなったあたりがいい。そこらへんで買っている普通のものですが。
西:
なかには何十万もするものもありますね。
河毛:
それはバンダナじゃなくてスカーフだろうね(笑)。
西:
バンダナにも本物というかアメリカンヴィンテージがあって、そういうのはプレミアがついて高いんですよね。もったいなくて手が拭けないかも。
河毛:
もう少しよそ行きの時は白い麻のハンカチ。
西:
麻の白いハンカチを持っている男性って品があって素敵。麻は繊維の中が空洞だから、乾きがとても早いのよね。
河毛:
イニシャルを入れるのも楽しい。白麻のハンカチなら、刺繍の色はグレーがいちばんシックでいいと思います。
西:
このあいだ、着る学校の事務局長の50歳の誕生日にまさにそれをプレゼントしたわ。女性には綿ローンの薄い生地のをさしあげたりする。
河毛:
人から聞いた話ですが、男性にイニシャル入りの麻のハンカチをあげる時に、たとえば河毛俊作の場合S.Kですが、SとKのあいだに女性の名前のイニシャルを挟むというやり方があるそうです。
西:
恋の始まり……♡素敵。
河毛:
ルイヴィトンのバッグなんかにもイニシャルを入れたりしますね。あれは日本で言えば紋付? 若きアラン・ドロンがヴィスコンティ監督と会った時、監督はヴィトンのモノグラムの旅行鞄をいくつも持っていた。それを見たアラン・ドロンは、「自分のイニシャルを鞄一式に全部入れていてさすがだと思った」っていう笑い話がある。
西:
アハハハハ! そうか。ルキノ・ヴィスコンティでLV! かわいい(笑)!
河毛:
素朴な田舎の青年だったドロンはルイヴィトンを知らなかったんだね。
西:
河毛さんを見ているとね、結局小物もすべてさりげなく全部意思が通っていますね。
河毛:
自分が好きなら、変えない姿勢は大事かも。昔、ウォレットチェーンをし始めた頃、クロムハーツはブルージーンズとかオートバイ族のものだったんです。
西:
アウトローの小物でしたよね。
河毛:
でも、スーツにあれをしてもいいと思った。スーツでドレッシーだから今日は長財布にしよう、とか思うんだったら、買うなよクロムハーツ、みたいな(笑)。極端ですけど。
西:
何十年か前に河毛さんが現場で初めてクロムハーツのチェーンをしてるのを見た時は、ちょうど猛烈に流行り始めたところだったから、「さすがトレンドをきっちり押さえてる」と思っただけだったの。それが令和の今も同じものを使い続けているのを見ると、これも生き方だよね、と思った。カッコいいよね。
河毛:
絶対財布をなくさないしね(笑)。女性読者が多いここで言うのもなんだけど、男のファッションは、女の人に気に入られようと思ったら終わりだよ。感じよく見えるのとモテるのは別の話だし、服の着こなしでモテるなら、そんなにラクなことはない。
西:
だから、ことファッションでは、若い男の子たちは年上の男に敵わない。こういう人なんだな、と思わせる味とか風格は、20より40、40より60歳かな。
河毛:
もしそれがあるとしたら「生きのびたやつの力」というやつかもしれません。
西:
すべてに自分の意思が通ってるのが男性ファッションの究極。それをいつも頭の中に置いておきたいですね。
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河毛さんが総合演出を務める舞台がまもなく開幕。ぜひ劇場にお出かけください!
『熱海殺人事件 バトルロイヤル50's』
2023年8月4日(金)~8月20日(日)
東京・紀伊國屋ホール
http://www.rup.co.jp/atami_2023.html
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